自分を思いやる、セルフコンパッションについて知ろう!

あなたは、「セルフコンパッション」という言葉を聞いたことがありますか?
セルフコンパッション(Self-Compassion)とは、心理学の分野からきた言葉で、日本語に訳すと「自分に対する思いやり」のことです。
毎日忙しく仕事に取り組む中で、思い通りにいかなかったり、上司や取引先など相手の期待に応えられないとき。
「自分はダメな人間だ…」
「私は他の人の役に立てないのだろうか…」
などと、自分を責めてしまうことはありませんか?
私なんか…という自己否定の感情をもっていると、自信がどんどんなくなっていくものです。
でも、セルフコンパッションを高めて、自分を責めるのでなく現状を前向きに受けとめれば、自分を必要以上に責めたり、否定的にならずに済みますよ。
セルフコンパッションについての基本の考え方
「セルフコンパッション」は、アメリカの教育心理学者、クリスティーン・ネフが著書の中で、説明しています。
セルフコンパッション=自分を大切にすることが大切だという考え方のこと。
セルフコンパッションを高めることで自分を思いやり、健康な心を保って、自分らしく生きていくことを目標にしています。
自分のありのままの性格や感情を受け入れて、自信のなさや完璧主義からくる毎日の窮屈さや生きづらさを改善して、より自分に優しくなってみましょう。
ありのままの自分を受け入れることで、自分だけでなく他人にも優しくなれたりと、いい循環が生まれてきますよ。
自分を大切にすること

思いやりは、普通、自分でなく他人に向けるもだと考える人もいると思います。
優しいあなたは、人には優しく自分には厳しくしているため、自分を責めがちで、いつもつらい思いをしているかもしれません。
でも、セルフコンパッションでは、自分の大切な人を思いやるように、自分のことも優しく思いやってあげることが大切です。
困難な状況にあったり、失敗してしまった時も、自分のことを否定せず、肯定してありのままを受け入れてあげましょう。
その思考が身につくと、苦しいことも今までより楽に乗り越えていけるはずです。
具体的にどうすればいいの?と悩む方へ
とはいえ、「自分を大切にする」と聞いてもピンとこず、
「自分を甘やかすこと?」
「わがままになること?」
「自己中心的になること?」
と、ネガティブなイメージを持つかもしれません。
ここで自分を大切にするというのは、ありのままの自分を受け入れることです。
- 自己批判をしない
- ダメな自分も自分だと受け入れる
- 無理にポジティブにならない
- 自然体の自分を認めてあげる
こういった考え方をすることが、自分を受け入れることに繋がります。
自分に自信がない人に、「もっと自信をもって!」と伝えても、かえって本人はつらいもの。
ですが、そんな自分に自信が持てない人こそ、自然体の自分を認めてあげることで、今までよりずっと生きやすくなりますよ。
セルフコンパッションへ繋がる3つの要素
セルフコンパッションには、次の3つの要素があります。
- 自分への優しさ(Self-Kindness)
- 共通の人間性(Common Humanity)
- マインドフルネス、あるがままの自分をみる(Mindfulness)
こちらの要素が具体的にどんなことになるのか?
まずは、ひとつずつ見ていってみましょう。

自分への優しさ
自分の大切な人が困っていたら何か力になりたいと思いますよね。
このように、周囲の人を思いやることが、自然とできている人は多いと思います。
そして、セルフコンパッションにおいては、人に優しくするように、自分のことを優しくいたわってあげることもとても大切なんです。
自分の容姿や性格、仕事ぶりなど、あなたにも自分を好きになれない部分がきっとあると思います。
しかし、そういった部分を否定したり、自分を受け入れられないままでいると、自尊心が下がってしまい、どんどん自分が嫌いになってしまいます。
自分の短所も受け入れ、認めてあげる。それこそが、自分への優しさです。
共通の人間性
まわりの人と自分を比べて、できないことがあったりすると、自信をなくすことはありませんか?
失敗したときに自分の批判をして自己嫌悪におちいったり、こんなつらい状況は自分だけだと、孤独を感じるシーンは誰しもあると思います。
でも、仕事やプライベートで、ミスをしてしまうことは誰にでもあり、みんなが失敗を経験するもの。
失敗してしまうのは自分だけじゃないし、どんなときも自分を批判する必要はないと認識しておきましょう。それだけでぐっと生きやすくなります。
私たちは誰も一人で生きているのではなく、社会に属して、周囲とのかかわりの中で今もこうして生きています。
自分と同じような境遇に置かれて、苦労している人がいる。
同じ境遇でつらさを感じている人がいて、理解してもらえると認識しておくだけでいいんです。
セルフコンパッションを高めるときには、このように自分が社会の一員であることを自覚することが必要です。
ときに思い通りにいかなくても、この世界には愛情や友情、思いやりや気づかいなどのあたたかな気持ちが存在して、社会が成り立っているのですから、孤独感を強める必要はありませんよ。
マインドフルネス
あなたは嫌なことがあったとき、そのことが頭から離れず、ほかのことが手につかなくなることはありませんか?
あるがままの自分を見つめたとき、思考や感情のコントロールにとらわれて、振り回されることがなくなります。
目の前の出来事やこの瞬間に集中し、何が起きているかを認識してみましょう。
イライラしたり、不安な気持ちのまま行動するとき、自分の考えの癖にもとづいて、悪循環にはまっていることがあったり、冷静に周りが見えなくなっているかもしれません。
- 大切な人に嫌なことを言われ、叫びだしそうなほど腹が立っている。もう縁を切りたい
- 思い通りに仕事を進められず、涙がおさえきれないほど、悲しくて悔しい
このように、 ただ「こう感じている」「こう考えている」という事実のみを受け止めてみてください。
気づいたネガティブな感情や思考を評価したり、否定する必要はありません。
そんな考え方は良くないと、無理にコントロールしようとしなくても大丈夫です。
マインドフルネスとは、このようにあるがままの自分をみることを示します。
まずは、今の自分の感情や思考をそのまま見つめることが大切です。
セルフコンパッションの効果

セルフコンパッションのポイントは、自分を甘やかすのでなく、自分と向き合うことです。セルフコンパッションを高めることで、次のような効果があります。
- 現実を受け止める、冷静に物事をとらえる
- 失敗や挫折をしても立ち直れる、困難に立ち向かう力がわく
- ストレスに負けないこころをつくり、精神的な健康を守る
- 幸せな気持ちを増やして、不安や抑うつを軽くする
- 自分にも周囲の人にも、思いやりを持つことができる
- 仕事、家事、育児などやる気が高まる
- 人間関係を円滑にする
ネガティブな評価と自分の現状を冷静に受け入れて、改善に向けた行動ができるようになりますよ。
自己肯定感が低い人は、ネガティブな評価を受けたとき、自分の存在そのものの否定されたように、傷ついてしまうことがあります。
しかし反対に、自尊心が高い人は、ネガティブな評価を過剰に恐れて、他者からポジティブな評価を受けることで自分を保つような面があるのかもしれません。
どちらが良い、悪いといったことではありません。
ただ、何事も完璧にする必要はないし、完璧な自分でなくてもあなたには価値があることに気づきましょう。
自分自身を受け止められるようになってくると、不安が和らぎ、ストレスも落ち着きます。
あなたに今やれることをひとつずつ、マイペースでこなしていけば大丈夫。
自分を大切にして、自分らしく生きていきましょう。